約束の場所


全てが終わったら帰ってくる…

　

そう言ったあいつのこと信じてたのに俺は裏切られたんだ。

　

　

蜘蛛を本当にやっつけて、緋の目も順調に集めてたあいつ。
クラピカの復讐がほんとの意味で終わる時を待っていた。
その時はクラピカが俺のもとに帰ってくる日…。

なのに…

いきなり繋がらなくなった携帯。
出て行ってしまった後のホテル。
今の俺とクラピカを繋げる物は何一つないんだ。

嘘つき…
俺おめでとうって…そう言ってクラピカ抱きしめてやるつもりだったのに。
クラピカ俺のこと…

キライニナッチャッタノ?――――

その時急に俺の携帯が鳴る。
誰だよこんな時に、切っときゃ…
だが画面を見てそんなイライラは一瞬で消える。
慌てて取って一言―――。

「クラピカ!?」

『あぁ、そうだ。すまない連絡が遅れた』
懐かしい声…ほんとにクラピカだ。
「…んだよ…何してんだよぉ…」
ほっとした安心感で声が震える。
「いきなりいなくなるなよ…」
『すまない…』
「今、どこ?」
『ルクソの方に帰ってきてる…』
あ、もしかして家族への報告かな?
そうだよなやっと終わったんだもんな。
「携帯の電源ぐらい入れててよ」
『すまない…圏外だったらしい』
ルクソ地方って田舎じゃん…。
でもよかった…俺捨てられたかと本気で思っちゃった。
「いつ帰ってくるの?」
『いや、帰るつもりは無い』

え…?

いきなりのクラピカの宣言にズキッて胸が痛む。
なにそれ?どう言うこと?
約束したじゃん、自分のことすべて片付いたら俺のところに…って…

「じゃぁ、俺が行く！！」
頭に来てそう怒鳴りつけて電話を切ろうとした時、クラピカの慌てた声が聞こえた。
でも、もう知らない。
電話なんかじゃイヤだ！直接訳を聞いてやる！！

　

　

「…で、本当にお前はやって来たわけだな…ι」
目の前のクラピカは大きな溜息をついて呆れかえってる。
「……」
で、やって来たはいいもののいざ来たらなんて言って善いか解からない。
だって、別れの理由聞くなんて…死刑宣告を待ってるみたいだ。
「お前はどうしていつも人の話を最後まで聞かないんだ」
「だって…」
聞きたくない話は聞きたくないんだからしょうがない。
「いいか、キルア。私達の予想とは違う結果が生まれてしまったんだ」
ズキッ…
んだよ、それ…
俺訳わかんねーよ。
「だから私はキルアの元へ帰ることはできなくなったのだ」
「いやだ！！」
訳わかんねーけど、イヤだってことだけは確かだ。
「だからな…」
「イヤなもんはヤだっつってんだろ！！」
「キルア〜…」
クラピカが困ったように眉をひそめる。
「俺…クラピカ好きなのやめらんないもん…」
泣きたい気持ちでじわじわする感じをぎゅっと拳握り締める事で我慢して、下を向く。
するとクラピカの手が俺を上向かせる。

ちゅ…

へ？
驚いて目を見開く俺にクラピカは真っ赤な顔でまだ困った顔をしている。
…違う、照れた顔だ。
「私もキルアが好きだ。だから帰れないんだ」
なに…それ？
「キルアの旅はまだ終わってない…、まだゴンといろんな世界を知るべきだ」
確かに、俺はまだゴンと旅を続けてる。
ゴンの親父さんも見つかってないし…
「最初の考えとは違い私の仕事のほうが早く終わってしまった」
そういえば予想してたより早かった気がする。
順調でよかったと思うもん。
「だから……

私の方がキルアの帰る場所になりたいんだ……」

　

え？
「それって…？」
「わたしがキルアのもとに帰ることは今は出来ない。お前の邪魔になりたくは無いから。
だが、お前が全ての事を終わらせた時、その時は私のもとに帰ってこい…意味はわかるな？」
……
こくん…
頷いて意味をもう一度よく考えて、照れる。
クラピカが帰ってこなかったのは俺のため…。
俺の目的とクラピカの目的の達成順位が変わってしまったから…。
「俺とクラピカ…今までと逆になるんだ…」
待つ者と帰ってくる者…。
「そういうことだ」
そうか…そういうことか…。
俺の帰ってくる場所…クラピカが作ってくれたんだ。
「まぁ、私も一旦はお前のもとに帰ってきたということで、約束を破ったことは許して欲しい」
「帰って…？」
「本当にお前に会いに行った訳じゃないが…全て終わったとき一番に思いついたのはお前だった。
すぐにお前のもとへ行こうと考えたのだが、邪魔になりたくは無かったので思い留まったのだ」
うわっ…いきなりそういうこと言うなよな。
どう反応していいかわかんねぇ。
「ゆ、許す…」
「よかった」
めちゃ照れてる俺の前でほっとしたように笑うあんたが、やっぱり可愛くて、
俺はすごい幸せを感じていた。

　

クラピカは約束通り俺の元に帰ってきた。
そして新しい約束―――俺の帰る場所をくれた。