新月の星
トレノ近くの森の中。 さくさくさく、と静かに枯れ葉を踏み分け奥へと向かう者がある。 彼女の名はフライヤ。ブルメシアが誇る竜騎士。 赤いコートに身を包み、愛用の槍を持って歩いていった彼女は自らをそこに呼び出した張本人を視界の隅に認め、足を速めた。 「…すまぬな、ちと、遅れてしまった。……ん? おぬし、武器を装備しておらんのか? 珍しいの」 「……いきなりそれか……」 樹木の1本にもたれかかっていた髪型が特徴的な男――サラマンダーは、その身を起こし、フライヤを見据えた。 「少しは風流な事を言おうという気にはならねえのか?」 「おぬしに風流心を見せても仕方ないじゃろ……。で、何ゆえ、武器を持っておらんのだ?」 「お前も槍を置いたらどうだ」 「? …別に良いが……何故じゃ?」 「こういう事をするのに、邪魔だからだよ……」 そういうとサラマンダーは、それでも下草の柔らかそうな所を所に、フライヤを押し倒した。
突然の事で一瞬何が起こったのかわからなかったフライヤ。何とか事態を把握したのは両手足をしっかり押さえつけられてからだった。 「これ! やめぬか!」 「断る」 そう言いサラマンダーはフライヤに強引にキスをした。 「…っ……」 つい力が抜けてしまいそうになるのを何とか奮い立たせ、フライヤは何とか逃げようとする。 しかし流石にびくともせず、長く、深いキスの後ようやくサラマンダーが彼女の唇を解放する。 「目ぐらい閉じてろ」 「何故おぬしとこんな……っ!」 「お前がなんとも思っていなくても俺はお前が好きなんだよ」 「勝手な理屈をこねるでない!!」 確かにそんな理屈が通ったら世の中に裁判所は要らない。 「…要はお前が俺の事を好きになりゃいいだけの話じゃねえか」 「私にはフラットレイ様という方がおるのじゃ! おぬしの事を受け入れる訳には行かぬ!」 「あっちはお前の事を忘れてたんだろう? ……お前も忘れりゃいいじゃねえか」 「忘れる…訳には行かぬ!!」 「……強情な女だな。……じゃあ、俺が……」 忘れさせてやるよ、と、サラマンダーはフライヤの両手をおさえる力を強め、ついでに足も足でしっかりとおさえ、まず彼女のスカーフを取りにかかった。 「何をするつもりじゃ!」 「わからねえのかよ」 ……ここまでされてわからなかったらある意味ちょっと凄い。 「……っ……そうではなく、何故こんな事をするのかと聞いておるのじゃ!!」 「好きな女を抱くのに理由がいるのか?」 「いるに決まっておろう! ジタンの真似をしても誰も感動せぬぞ! そもそも私にはフラットレイ様という方が……っ」 その言葉を全く意に介せずサラマンダーは次々、フライヤのコートのボタンを外していく。 「ええい止めぬか! 誰か! 誰かおらんのか!?」 「無駄だ……あいつらの食事にはたっぷりスリプル草を入れておいた……今日中にはまず、目覚めねえ」 ちなみにトレノの貴族がここに来る訳が無いし、警備兵は無気力。大体、サラマンダーがひとにらみすれば逃げ帰るだろう。 「……それより、もう少し静かにしたらどうだ」 と、サラマンダーがまた、フライヤにキス。 外見からは想像できぬほどに器用な彼の舌は、奥へと逃げるフライヤの舌を絡めとり、自らと絡み合わせる。 しばらくそんな状態が続き……やっとサラマンダーが唇を離す。……混じり合った唾液が糸を引く。 「……っふ…………」 意に反し、口から漏れた声に顔を赤くするフライヤ。 その様子を見、サラマンダー。 「色っぽい声も出せるんじゃねえか」 「………っ!!」 羞恥と、認めたくないという思いがあいまって頬を染めるが。 「……お前、そうやって赤くなった状態がどれだけ可愛く見えるか知らねえだろう……」 既にコートの前ボタンは全開。中のシャツもめくりあげられようとしていた。 抵抗しようにも、力が入らない。全力を出したとて跳ね除ける事はかなわぬだろうが。 「……噂は本当だったようだな」 ブルメシアの竜騎士フライヤは、キスに弱いと。 その情報が彼のもとへ届いた直後は、それだけで情報料をとろうとするその情報屋に殺意すら覚えた彼だったが。 今の彼は、その情報屋に感謝すらしたい気分だった(笑)
「さてと……」 完全にフライヤの服を脱がせ終わってから、サラマンダーは呟いた。 生憎、今日は新月。月の光は届かない。ただ星の光のみが、彼らを照らしている。 「おぬし……自分が……何を……」 両の瞳から涙をこぼれ落ちさせつつも、キッとサラマンダーを睨み付けるフライヤ。 「今更だろうが。……どうせ俺はお尋ねものだ……」 そしてもう1度キス。 先程からの愛撫もあり、彼女としては決して認めたくは無い感覚が身体を駆け巡る。 いっそ気を失ってしまえさえすればどんなに楽な事か、と唇を噛む。
鍵のかかった聖域の扉をこじ開け、侵入者が1人。 「……っ……あぁ…っ……」 彼女のが心がどんなに抵抗しても、つい漏れてしまう声。 フラットレイが旅立ってからの5年の歳月が長かった故なのか。 拒みつづける意思に反して、彼の動きに反応してしまう身体。 「たっ……だで…すむと……」 屈辱と快感という相反する感情に挟まれフライヤは、絞りだすように言った。 「ふっ……知られても良いというのか、他の人に?」 「くっ……」 あの方にだけは、フラットレイ様にだけは知られたくない。 フライヤのそんな気持ちを見透かしたように言葉で責めるサラマンダー。 「ブルメシアで噂でも流すか?」 「お…主っ!!」 冗談だ、と1度は笑ったものの、それも楽しそうだ、と翻す。 屈辱に震えるが……。どうする事も出来なかった。 「せいぜい楽しむんだな……」 「楽しめる…訳、など……っ!!」 無いじゃろう! という言葉も封印され。 「っ……あぁ…っ……」 「……もっと聞かせてくれよ」 お前のその声を。 舌だの唇だのを噛んで我慢するような事はするな……。
「――…ぁっっ!!」 フライヤの細い白い身体がサラマンダーの腕の中で痙攣する。 ほぼ真っ白な頭の中ですら、あの方以外に最後までされてしまった………その事が彼女の心にのしかかる。 噛み締めていた唇からは一筋の血。心に相反し、与えられる刺激に反応してしまった身体は重い。 何よりも、あの方とは違い幸福感というものが感じられない……。 「……っく……」 あの方に申し訳が立たない。あそこで槍を手放したりしていなければ。 しかし後悔せども遅い。時を巻き戻す事は出来ない。 それを1番良く理解しているのは彼女自身であるのだ。 溢れる涙を拭おうともせずに、彼女はのろのろと服を身に付けた。 いっそ死のうと思った……。 「自殺なんて考るんじゃねえぞ」 それを見透かしたようにサラマンダー。 「おぬしが悪いのじゃ!! ――おぬしが……こんな……っ」 声を詰まらせるフライヤ。 「……すまねえ。ただ……」 どうしてもお前を手に入れたかった、と告白するサラマンダーに。 「すまぬ。……例えどうなろうと私はフラットレイ様の事を想いつづける」 即答であった。 そこでにやりと笑うサラマンダー。 「死んじまったら想い続けなんかできねえからな」 絶句するフライヤの肩を叩くと。 「ま、身体軽く冷やしといた方がいいんじゃねえか?」 闇に溶け込んだ。
まだ溢れつづける涙を拭って。 重い身体を引きずり、泉を目指した。
月シリーズ第3段v
サラフラで強姦いいですよね^q^
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