片想う。 〜風立志編〜


最後に君にキスをした。
それは唇がほんのり触れあうだけの子供じみたものだったけれど、君が驚いた顔をしたから俺はごめん、と謝った。
これで本当に最後にしようと決めていた。
何が始まりだったのかなんてもう覚えてもいないし、君が応えてくれることはとうとうなかったけれど、それでも俺は君が好きだったよ。
「こんな俺でもまだ友達だと言ってくれる?」
君から一歩遠ざかり、俺は笑顔を作って返答の分かりきったことを尋ねる。
「もちろんだよ」
想像通りの、眩しい笑顔で答える君。いつかの光景を思い出す、変わらない君。
「ありがとう」
泣きそうになるのをこらえながら、俺は笑顔のまま今までの想いに終止符を打った。

初めての恋だった。
それは本当に恋と呼べるものだったのかよくわからないけれど、それでも俺は君がとても大切だった。
こんな気持ちは、きっと後にも先にも二度とないのだろう。そんな確信だけが湧いて出て、一人部屋で戸惑いながら君のことを思い浮かべては苦しくなった。
友達という関係が辛くて、それでも誇らしくもあって。
壊すこともそのままを保ちながら進むことも俺にはとても難しいことのように感じていた。
自分の感情を肯定することも否定することも出来なくて、眩しい君が羨ましくて妬ましい。
だからいっそのこと、すべてを忘れてしまいたいと願ったんだ。 

「藤原」
「ん?」
努めて明るく、今までの過ちも何もかもを感じさせないように俺たちはこれからも付き合っていくのだろう。
「何かあったら電話してね」
「ああ」
「僕じゃ何もしてあげられないかもしれないけど、でも相談とか乗るからね」
にこりと笑う。俺もそれに応えて笑う。
明日にはもう君はこの島にはいないのだと実感してかなしくなる。
君の優しさはいつでも俺を救ってくれた。君のいない日常で、俺は明日からどんな顔をするのだろう。
「吹雪も、一人で何でも抱え込むなよ」
「大丈夫だよ、僕には君も亮も明日香も、みんながいるから」
友情は永遠だよ、と君は言う。君らしい言葉だ。
本当に、友情とは残酷なくらいあたたかくて強い絆なのだと、俺は君を見て初めて知ったんだよ。
友達とは付き合うことも、愛し合うこともない。別れることもできない。
だから諦めることも、できなかった。

島を発つ君を見送る。船は汽笛を鳴らしゆっくりと港を離れていく。
君は甲板に君の妹と並んで大げさなくらい強く手を振って、俺や他の後輩たちも同じように手を振った。
これが今生の別れではないと知りながら、それでもこんなにたくさんの人が別れを惜しんで、中には涙を流す人もいる。君は大勢のひとの永遠だったのだと思い知る。
俺は船の上の君が君だと分からなくなるまで手を振った。
船はだんだんと小さな影となって水平線の向こうへ消えていく。その様子を眺めながら、俺は自分が泣いていることに気がついた。







藤原が吹雪さんのこと「君」とか違和感あるけど、まぁ、キニシナイ!!←
これ分かりにくいけど吹雪さん卒業するお話でし、た。
卒業する吹雪さんを見送る留年生藤原的な。
あれ、なんか藤原がすごくかわいそう^p^




















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