アルペジオ
「ねぇ、ここ空いてる?」 そう尋ねながら、それなのに答えは聞こうとしないで隣に座ろうとするレイに、藤原は少し困惑したようにその笑顔を見上げる。 「空いてるけど」 別に席なら他にいくらでも空いてるじゃないか、という台詞は飲み込んだ。にこりと微笑んでそのままレイは藤原の隣の席に座る。授業の始まる前からきっちりと教科書や筆記用具を机に並べていく、そのしぐさを横目で眺めつつ、藤原は妙な緊張を感じた。 チャイムが鳴り教師が教室に入ってくる。教室にいる全ての生徒が教台のほうへ意識を向ける中で、藤原だけはもやもやと隣に意識が引っかかっていた。 別に隣に座られて嫌なわけじゃないけれど、疑問は残る。どうして彼女はあえてこんな僕の隣に、なんてやや後ろ向きな姿勢で考えた。 過去の過ちとそれに伴う留年という負い目があるせいか、実際周りがどう思っているかは別として、藤原は常に心のどこかで疎外感を感じていた。親しげに話しかけてくれる同級生はいても、藤原自身が無意識のうちに壁を作ってしまっている。 そんな状況の中で、レイだけはそんな壁など見えていないという風に振舞っていた。彼女自身他の同級生と年が離れている環境にいるからだろうか、まるで藤原のそんな疎外感や孤独感を全て知っていて、且つそれを緩和させるかのように接してくれる。 そんなことをぼんやりと考えながら、形だけは握っていたシャープペンの先を見つめていた藤原に、不意に声をかけたのはレイだった。 「ねえ、消しゴム持ってる?」 一瞬どきりと心臓がはねた。授業は上の空で聞き流していたのに、声だけでこんなにも反応するなんて、と藤原は自分でも思っていなかった自身の反応に戸惑いつつ隣を見る。忘れちゃって、と苦笑して付け加える口元には他の女子とは違いグロスもルージュもつけていない。そんなところに気づいてから、ハッとして藤原は自分を叱咤した。何を見ているんだ、と。 「消しゴム?ああ、あるよ」 平然を装いながら、筆箱から先の黒く汚れた消しゴムを取りだして、ああしまった、と無意識に思う。とっさに指の先で僅かについていた消しかすを掃い、差し出されたレイの手に乗せた。 渡したあとに、その手の指の細さが目に付いた。 「ありがと」 小声で囁いてそのままノートへと視線を移す、その横顔をなんとなしに眺めながら、藤原はレイの隣が自分であることに安堵しているのを感じた。 鬱陶しいと、思っていたはずなんだけどな。自分の感情を上手く把握できない違和感に内心眉根を寄せる。 それでも、複雑な気分にうつむいた藤原の顔を下から覗き込み、驚いた顔を見せた彼にいたずらっぽく微笑んで消しゴムをその手の中に返したレイに、藤原は驚きながらも何処かでその状況を楽しんでいた。 指先が彼女のそれと触れる、それだけで心臓が跳ねた事実は今はまだ直視できそうもない。 芽生えたその感情の意味を自覚するのは、もう少し先のこと。
珍しくノーマル(゚∀゚)
21歳と14歳が同学年とか考えたら萌えてきたのでつい。レイ可愛いよレイ。
そして藤原は片思いが似合うと思うます^q^
それにしてもなんか文章スピードが速すぎる、な・・・orz
もうちょっと間延びさせたかったんだけど、あの、見直すたびに恥ずかしくて・・・(待
あー誰か亮レイとか書いてくんないかな!(それなんてドリーm←
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