アイクル


「もしもひとつだけ願い事がかなうとしたら、君は何を願う?」
 いつものことながら、僕が訪ねてきたというのに相変わらずの無愛想でカードを見つめていた亮に、ふとした好奇心で聞いてみた。
 亮はカードをいじる手を止めてちらりと僕を見る、そして何も言わずすぐに手元のカードに再び視線を落とした。まったく興味ないとでも言いたげな動作だけれど、それでも僕は彼の行動は無関心からではなく彼なりに僕の言葉を咀嚼して回答を考えているのだと知っている。
 勝手に腰かけた彼のベッドの上で、ぎしぎしといたずらにスプリングを鳴らして言葉を催促する。隣に座る亮の体が同じようにぐらぐら揺れて、小さくため息をつきながら再び僕を見た。
 これではまるで暇を持て余した子供が母親の関心を必死に自分へ向けようといたずらをしているみたいだ、なんて思いながらも、なんだかんだでこうして僕と向き合ってくれる亮に甘えて僕はにっこりとほほ笑んで返事を促した。
「・・・・・・おまえなら何を願うんだ?」
 亮の視線は鋭いようでいて優しい。口元がわずかに上を向いている。これはほんとうに他愛のない会話で、ああこれが僕たちのいつも通りなんだと改めて認識する。
「僕だったら? そうだねぇ、君とずっと一緒にいられるように、かな」
 亮の言葉は予想していた。だから僕も用意していた答えを唇に乗せる。
 饒舌に君を誘ったつもりだった。
 本当は質問の答えも内容もどうでもよくて、ただ僕がこうして亮の眼を見つめればきっとその指先をカードから離し僕の顎に添えるとふんでいた。そしてそれは思った通りに展開される。
 亮は眼を伏せてその小さな笑みを少しだけ強め、持っていたカードをベッド脇のサイドテーブルに丁寧に置いた。そしてそのまま僕のほうへ腕を伸ばして、その白い指先が僕の顔の輪郭をするりと撫ぜる。親指の腹が唇に触れて、僕は静かに目を閉じた。亮がそっと口付けてくる。
 彼が求めるままに僕は応える、やがてそれは僕の予想をわずかに越えてだんだんと激しくなった。呼吸が苦しい。いい加減な姿勢が少し辛くなってきて、泳いでいた右腕をベッドについて体を支える。ぎし、と小さくスプリングが音を立てる。唇の角度を変えるのに合わせ腕に力をこめてわずかに体勢をずらす、またスプリングがぎしぎしと鳴った。けれどだんだんとそんな音も聞こえなくなってきて、無意識に亮の腕を掴んでいたもう片方の手を解き亮の首に回して、もっと欲しいと引き寄せた。
 体を支えていた腕に力を込めるのさえだんだんと辛くなって、ああもう彼にもたれかかってしまおう、そう思った刹那に唇は離れた。僕は少し恨めしげに彼を見る。彼の眼はまっすぐに僕を見ていた。
 僕がもう一度目を瞑ると、今度は軽く触れるだけのキスをくれる。そしてそのまま僕の耳元に唇を寄せて耳たぶをわずかに湿らせた。
「お前の願いは、願わなければ叶わないものなのか?」
 すこし意地の悪い、低い声。吐息が耳に触れて僕は内容をよく把握できなかった。くらくらと思考が溶けていくのがわかる。
 言葉はきっと媒体にすぎない。亮の声が鼓膜から全身に沁みこんできて、じくじくと熱を孕む。僕は咄嗟にベッドに置いていた腕も亮の首に回して、今度こそ全身で彼に倒れかかった。体勢が崩れて二人ベッドにどさりと沈む。
「亮が叶えてくれるんだろう?」
 今度は僕が亮の耳元へ囁いて、彼の頭を抱える腕の力を少しだけ強くする。それに応えるように背中に腰に腕が回されたのを合図に、もう一度深く深くキスをした。







やまもおちもいみも無い。
七夕用に急ごしらえと思って書きはじめたのに七夕間に合わなかったんだぜ。
なんか亮吹って無意味にいちゃついてるイメージ(´Д`*)
自重なんて知らない^^




















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